令和元年度 研究記録・・・

令和元年度 はと組・5歳児 研究発表

テーマ『主体性を育む中で落ち着ける環境作り』

〇はじめに

主体性(主体的)とは、目的を果たすために何をすべきか考えながら、自分の意志行動を決定出来る性質・人の事である。5歳児はと組では、就学前の今年度1年間を通じて“子どもたちが・子どもたちから”を大切に《話し合う時間》《考える時間》を十分に作り、日々の活動において可能な限り、その目的を子どもたち自らが考え、何をどう進めるか…などを決めて意欲を持って自由に楽しく取り組めるように環境作りを行う事にした。

また、昨年度より年間を通して行っていた“染め物”をはじめ、子どもたちが親しんでいる保育内容をさらに発展させて、子どもたちの言葉や発想・感性を軸に活動し、そこから“幼児期に育って欲しい10の姿”の育みにも繋がるよう“主体性を育む”を今年度の保育テーマとした。

<取り組んだ内容と子どもの様子・変化>

≪Ⅰ期≫

○4月

*押し花作り 新年度の春を迎え、気候の良い日に芝生の山・海浜公園へ散歩に出掛けた。桜やタンポポ・シロツメ草など多くの花が咲いてるのを見つけて「押し花作ろうよ」「花を部屋に飾ろう」など子どもたちからたくさんの提案がされ、みんなで押し花作りを行う事にした。
昨年度に行った押し花作りを覚えていて「新聞に並べるんやな?」「ティッシュで挟んだ方がきれいやで?」と子どもたち自ら摘んだ花で押し花作りに取り組む姿が見られた。今年は不要の図鑑にも挟んでみた。「また今年も作った押し花でランチョンマット作ろう!」と子どもたちの希望で押し花を使用してランチョンマット製作を行った。

*染め物(あんずの花びら・枝)

《枝をのこぎりで切る》 こいのぼり製作に向けて“あんずの花びら・枝”を使用して染め物を行った。枝は長くて煮出しの鍋に入らないことから、まずは子どもたちと一緒にのこぎりを使用して短く切った。初めて使用するのこぎりに緊張と不安の表情を見せたり、簡単には動かないのこぎりに「どう動かしたら良いのか?」「危なくないためにはどうすれば良いのか?」を考えながら真剣に取り組んでいた。
どのような姿勢が力を込めやすいか?のこぎりは引く時より押す時に力を込めるとよく切れる…など回数を重ねるごとにのこぎりの動きがスムーズになり、嬉しくて「一人で切りたい!」と言うほど意欲的に取り組み、良い経験となったようである。

《布を染める》 多くの輪ゴムで模様付けを楽しむ。
二重・三重の輪にしようと工夫したり、小さい輪や大きい輪にするにはどう輪ゴムを巻けば良いか発想を楽しみながら取り組んだ。
あんずの花びらはピンクだが「枝は何色に染まる?」と煮出し汁を興味深げに覗き込む姿が見られる。
「茶色?オレンジ?」と楽しみに染め布を乾かすと「え?ピンク!」と染め上がりの色に、驚きや喜びなど様々な表情を見せていた。この染め布をこいのぼり製作と保育室ホワイトボード固定用に使用した。
保育室の中にピンクの布を使用すると柔らかく優しい雰囲気になり、保育環境が良くなったように感じた。

*こいのぼり製作(あんず染め布使用) 5月こどもの日に向けてこいのぼり製作を行う。子どもたちに「どんなうろこが良いか?」と尋ねると「絵の具使いたい!」
「折り紙も良いな?」「アッ!染めた布使ったら?」とたくさんの意見が出た。
その中から染め布を使用して編み込み模様を行った。まず布を3等分に切る所からスタート。紙とは違いスムーズに切る事が出来ず苦労しながらも「ハサミをゆっくり動かせば切れる」や「反対側持って手伝うわ」と隣同士で協力し合うなど子どもたちなりに考え工夫しながら進めていた。編み込み模様は紙が破れないように指先を上手く使いながら編んでいった。
その時に子どもから「吹き流しもこの布で作ったらいいやん!」との声が上がった。保育教諭はそこまで考えていなかったが、とても素晴らしい子どもの発想であるため急遽、画用紙ではなく布を使った吹き流しをそれぞれに製作した。
子どもたちの意見を取り入れた製作は特に生き生きと意欲的であり、はと組ならではの素敵なこいのぼりが完成した。

*グループ名決め(話し合い) 新しいグループ分けを行い、各グループの名前を話し合いで決める。グループそれぞれに好きな名前を出し合い、ジャンケンしたり多数決や譲り合いするグループもある中で1グループだけは上手く話し合いで決定出来ず、意見の衝突があったため保育教諭が仲裁に入り、子どもたちの意見を大切にしながら話し合いを進めた。
今後も子どもたちの話し合いの時間や声を大切に様々な活動を進めていきたいと考える。

*栽培活動(野菜選び) 栽培活動に向けて野菜の苗を購入する。今年度は子どもたちが育てたいと思う野菜を育てる事にした。一人ひとつ育てたい野菜を発表しその中からグループで2種類の野菜を話し合いで選んで決めた。同じ野菜を選んだグループがあったが「はと組みんなで育てるから一緒やな」と譲り合いの声が早くから上がりスムーズに決定する。
今年度は〈パプリカ・キャベツ・なすび・きゅうり・ミニトマト・おくら・とうもろこし・すいか〉を栽培する事にした。

〇5月

*えんどう豆の皮むき 給食に使用するえんどう豆の皮むきを「やってみませんか?」と給食の先生に声掛けしてもらい子どもたちが「やってみたい」という事で挑戦した。自分たちが皮をむいた豆がどのように調理されて給食に出てくるのか楽しみに、また小さいお友達が喜んで食べてくれるかを楽しみ丁寧にむいていた。むき始めが固く苦戦していたが、子どもたち同士で「尖ってる方からむいた方がやりやすいよ」「1つの中に9個も入ってる!中にいっぱい豆が入ってるんだ」と発見しながら取り組んだ。
その時に「この皮って捨てるの?染め物しようよ!」という声が子どもたちから上がった。その声を大切に次回の染め物ではこのえんどう豆の皮を使用する事にした。

*泥団子作り(第1回目)
〈年間を通して泥団子作りに挑戦し、様々な違いや変化に気付き楽しむ〉
第1回目は普段の園庭遊びの中で保育教諭と数人の子どもたちとで泥団子作りを行い、楽しい会話から周りの子どもたちにも「やってみたいな」と興味が湧くように広げていった。
「さら砂で作ってみよう」「(園庭にある)お山の砂できれいな団子が作れるよ」など子どもたちなりに考えて、ほぼ全員が団子作りを楽しんだ。
すぐに潰れてしまう子どもが何人かいて「違いは何だろう?」と考え「そういえば二色の浜から持って帰って来た砂がサラサラやからそれで作ったら良いのと違う?」という子どもの声から、次回はみんなで二色の浜の砂で泥団子作りに挑戦する事にした。
また他の保育教諭から「布でこすったらピカピカ団子になるよ」と聞き、「布を使ってみたい」との希望があり、こする布を準備して挑戦してみる事にした。

*廃材遊び(第1回目:自由製作) 〈年間を通して廃材遊びを行い、工夫・気付き・想像力などを育む〉
第1回目は題材などを与えずに多くの廃材の中から自由に使いたい物を選択し、製作を楽しんだ。
自分が持ってきた廃材・絵が描かれたかわいい廃材を選び“何を作りたいか?”ではなく“この廃材を使いたい”という思いが強く、ただ廃材をくっつけている・1つの物を丁寧に…ではなく2つも3つも作っている状態であった。
保育教諭も子どもたちの輪に入り一緒に〈人間〉を作る。
各パーツに合った廃材を使用し、目・鼻・腕・足などを工夫して製作する。また、子どもたちの中でも工夫している子どもの作品を褒めると、その声を聞いて他児も興味を示し真似をするなどの工夫する姿が見られた。
テープの付け方は必要でない部分にまで貼っている子どもが多く助言した。
子どもたちが保育教諭の作った<人間>に興味を示したので、次回の廃材遊びで〈自分作り〉に挑戦する事にした。

*生け花 子どもたちが園庭に咲いている草花を収穫、花瓶や花も個々に好きな物を選び生け花を楽しんだ。「この花がかわいいかな?」「たくさんの色の花を入れよう」など細かく考えながら生ける子どもや、大胆に手際よく生けるが出来上がりがとてもバランスよくまとまって いる子どもなど個性的な生け花が完成した。
それぞれ自分の生け花を園の玄関や各保育室など様々な場所に届けて飾ってもらう事で子どもたちの喜びや自信に繋がった。

〇7月

*お泊り保育での染め物(運動会で使用の布) 10月の運動会に向けて子どもたちと話し合いを行う。
今年はオープニングで演技を行うかどうかを子どもたちに決めてもらう事にした。
「去年のはと組さんみたいにやりたい」「カラーガードやりたい」「布持って何かやったら?」と提案があり、お泊り保育での活動として運動会用の染め布を作った。
各グループごとに話し合い、染める色を決める。
ローズ色が人気で希望が重なったが、これまでも話し合いで活動を進めてきた事により、譲り合いの気持ちを持てるようになり「違う色でも良いよ」と4グループそれぞれ〈ローズ・水色・黄色・オレンジ〉で染め布を完成させた。

*染め物(えんどう豆の皮・玉ねぎの皮) 先月第五中学校で育てられた玉ねぎの収穫をさせて頂いた。
大切に育てられた玉ねぎを子どもたちも傷つけないように大切に収穫した。給食で使用する玉ねぎの皮むきをお手伝いした際に「この皮も染め物に使えるんじゃない?」と子どもたちから声が上がり、今回の染め物に使用する。
「玉ねぎの皮って何色に染まるのだろう?やっぱり茶色かな?」と子どもたちは予想するが実際には黄色に近く、子どもたちも驚きと喜びの表情を見せていた。
先日のえんどう豆と玉ねぎの皮で染めた緑と黄色の布で夕涼み会のうちわ製作が出来ないか子どもたちに尋ねたところ「ひまわりの花が出来るよ!」との意見が出て、今年のうちわ製作で取り組むことにした。
様々な場面で染め物をしたいと子どもたちの意欲が湧く事に嬉しく思う。

≪Ⅱ期≫

〇 8月

*布遊び(運動会オープニング) 運動会オープニングに向けてお泊り保育で染めた布で布遊びを行う。布を広げてその上に座ったり、振ってみたり、様々な動きを楽しむ中で運動会のオープニングでどんな動きが良いか子どもたちに尋ねてみた。「きれいな色を見て欲しいから大きく広げる」
「大きい布で体を隠せるよ。布に隠れよう」「広げて持って走ったらきっとかっこいいと思う」などたくさんの意見が出て、その動きを遊びに取り入れた。子どもたちが生き生きとした表情で楽しんでいたので実際に運動会のオープニングの振り付けに導入した。

*泥団子作り(第2回目:二色浜の砂で作る) 泥団子作り第2回目は前回の泥団子作りの際に子どもたちから「二色浜の砂はサラサラだから、きっと綺麗な泥団子が出来るのでは?」との声があったので、二色浜の砂を使用し泥団子作りに取り組んだ。園庭の砂と違い、大きな石が含まれておらず、手触りの良さを感じながら作り始める。
だが、園庭の砂を使用した時と同じように作るものの固まりが弱い事を感じる子どもが多く、実際にすぐひび割れてしまい普段より団子作りに苦戦している様子だった。
「何ですぐに潰れてしまうのだろう?」と子どもたち同士で話す姿が見られ「海の砂はあかんのかな?」「大きい石はないけど小さい石がいっぱい入っているのかな?」などと考えていた。団子作りに成功したのはほんの数名で残念な結果となったが手触りがサラサラだけで良い団子が出来る訳ではない事に気付いた。「やっぱり園庭の砂でサラ砂をいっぱい作って団子作りしよう」と意見が出て、次回は団子作り用のサラ砂作りに取り組む事になった。

*新しいグループ分け(グループ名決め) 1年の後半に向けて新たにグループ分けを行った。4月のグループ決めでは、保育教諭が仲裁に入らないと決められないグループもあったが、今回は子どもたちから「話し合いしてみんなで決めても良い?」との声が上がり「では、お話で決めてね」と静かに見守った。

半年間さまざまな機会に話し合いの時間を大切に行っていたので、自分の意見もしっかりと伝えながらも「○○くんは何が良い?」や「ジャンケンで決めて良い?」など相手の気持ちもしっかりと聞いてあげられる素敵なやり取りが見られた。
今回は保育教諭が仲裁に入らずとも〈にじ・ダイヤ・うちゅう・くま〉というグループ名がスムーズに決定し、子どもたちも満足げな表情の笑顔を浮かべていた。

〇9月

*廃材製作(第2回目:自分製作) 第2回目の廃材製作では前回の様子を覚えている子どもたちから「今日は自分を作ってみよう」と提案が上がり、自分の姿一体のみを作ることでスタートした。「違うものを作りたい」という子どももいたが、他児が自分作りを楽しんでいる様子を見て、次第に一緒に自分作りを始めた。
ペットボトルのキャップを目や口に見立てたり、プリンカップを帽子にしたり、腕を曲げられるようにしたりと、個々に工夫して子どもたちそれぞれに個性的な〈自分〉が出来上がった。前回は“好きな廃材で作る”だったが、今回は“これを作るには何を使えば良いか”を考えながら製作していた。完成した〈自分〉のどこを1番工夫したかを自分の言葉で発表しながら披露し合った。

*サークルタイム(話し合いの輪) 子どもたちが自分の言葉で発表する、また友達の言葉をしっかりと聞く〈サークルタイム〉普段の活動や朝・帰りの会でも行っているが今回は子どもたち自身の近頃の様子や行動を振り返るサークルタイムを3グループに分かれて行った。
クラス全体について子どもたちの言葉で今素直に思うことを発表する。悪いところ・直すべきところも多く聞かれる反面、(○○くんはこんな良い所がある)や(こんな良いことをしていた)など保育教諭の気付かない子どもたちの姿が発表され、悪い所を指摘し合うだけでなく「友達は自分の良い所も見てくれているんだ」「こんなに良い一面があるんだ」と気付く・認め合える意義のある時間となっていると感じる。サークルタイムで更に子どもたちの良い所を育んでいけるように今後も引き続き行っていく。

〇10月

*苔 今月の月刊絵本『こけ』を読んでから、テラスや園外に出た際に苔に興味を示す。テラスに少し乾いたような苔を見つけると、水をかけ本当に色が変わるのかを実践して確認し、友達や保育教諭に知らせて発見を共有する子もいた。
散歩時には、たくさんの苔を見つけると「(園に)持って帰ろう」「育ててみよう」と子どもたちから提案があり、実際に持ち帰ってお部屋のプランターで育てる事にした「色変わったかな」「苔どうなっているかな」と楽しみながら観察していた。自分たちで考えて育て始めた苔により、今まで以上に植物への興味が深まった。

*ミュージックフェアに向けて(曲決め) くま・ダイヤ・にじ・うちゅうの4グループごとに、グループ名にちなんだ合奏曲を決める。名前が入った曲を連想する子が多く、1グループはすぐに意見がまとまり決まる。
ダイヤグループは名前が入った曲がなく難しいかと思ったが、ダイヤ→キラキラ→星と連想していき、柔軟な発想から曲を考え決めていた。
2曲の案が上がったグループは、それぞれの思いが強くなかなか決められずにいた。
話し合いを続ける中で、「多数決だと(多い方に)決まるから、ジャンケンで決めよう」と1人が提案すると他の子も納得し、ジャンケンで決めていた。
自分も相手も納得の出来る方法を考え、話し合いが出来るようになってきた。
曲は「くま:もりのくまさん ダイヤ:星に願いを にじ:にじのむこうにうちゅう:宇宙船にのって」に決まる。自分たちで決めた曲ということもあり、合奏への意欲的に繋がった。

*トウモロコシ(栽培終了・人形作り)
《栽培終了》
グループごとに、夏に育てたトウモロコシの土をプランターから袋に移し片付ける。それぞれ“袋に土を移すグループ”“袋を持つ人とスコップで土を袋に移す人とで分担しながら作業するグループ“など様々であった。
早く終わったグループの子どもは、他のグループを手伝うなどグループを超えて協力する姿が見られた。
しかし、中には他のグループからの手伝いを拒み、自分たちのグループだけで最後までやり切りたいというところもあった。全体で協力してやり遂げようとする子どもたち、グループの仲間意識が高い子どもたちと姿は様々であったが、最後までやり切ろうという気持ちが感じられた。

《人形作り》 乾燥させたトウモロコシの葉っぱで人形を作る。
「これ(雄穂)スカートみたいに出来そう」とイメージを膨らませ、工夫しながら積極的に製作していく子・どうすれば人形になるのかイメージが湧かず「どうやってするの?」
「手伝って」「出来ない」とあきらめてしまう子など様々であった。
「巻いてみたらどう」など保育教諭が助言しながら手伝ううちに子どもたちから「こうしたら手に見えそう」「ペンで顔描きたい」と想像力を膨らませて素敵な人形を完成させた。

〇11月

*染め物(べに花) 花と枝を一緒に煮込み染め汁を作る。黄色い花と茶色の枝でどんな色になるのか今までの経験から予想している子どももいた。
煮出し汁が出来ると「何色になったかな」「やっぱり茶色やった」「なんかお茶みたいなにおいがする」などと視覚・嗅覚で感じ楽しんでいた。

*泥団子作り(第3回目:さら砂) 泥団子作り3回目は、前回の「次はさら砂で作ろう」という子どもたちの声から、みんなでさら砂作りを行った。
ふるいで作る子・砂を入れたお皿を回して作る子・表面のざら砂をどけてさらさらの砂だけを集める子と個々に考えたさら砂作りの姿があった。
そして翌日、さら砂だけを使用して泥団子を作った。
作り始めると「さら砂だから作りやすい」と前回の二色浜の砂との違いを感じていた。以前「だんご作りには布で擦ったら良いと教えてもらったからやってみたい」という発言があり、布を用意して行う。
早い段階から布で擦ってしまうため「ピカピカにならない」と不思議がる姿もあった。
団子が完成してから全員で見せ合う。「○○くんの団子が綺麗」と友達の団子に感心を示し、次回への意欲に繋がる。
ピカピカ団子を目指す子もいるが、大きい団子を目指す子も多く大きい団子は牛乳パックで作った団子入れに入らず、別の所に置いている間につぶれてしまうこともあった。
数日後、団子作りの続きをする。布で擦ろうとするが団子の土が固まっているのでぽろぽろと落ちてしまう。水を使用する事を提案すると初めは団子を直接水に付け、「何だかドロドロになってしまう」と思うように出来なかったが友達の様子からヒントを得た子は水を加減して付けていた。
その後の園庭遊び時には、泥団子を作って遊ぶ子が増えた。
団子の表面を少しずつ濡らしながら数日掛けて作ったり、保育教諭にアドバイスを求めながら布で擦り、よりピカピカな団子を目指す子もいた。
1回1回の経験から次回に繋げ、向上心が育まれているように感じた。

*ピザ作り 《買い物》 事前にグループごとで、何の食材を買うかを決める。
意見を譲り合えず決まるのに時間がかかるグループもあったが話し合いする事にも慣れ、他のグループの案が聞こえてくると被らないように決めようとする姿も見られるようになっていた。
後日、“キャベツ・トマト・玉ねぎ・ジャガイモ”を買いに行く。

《クッキング》 各グループが購入した食材を切ったり、ちぎったりする。それぞれに「○○ちゃんから順番にしよう」「ジャンケンで順番決めよう」と保育教諭が促す前から話し合いを行い、スムーズに決めて開始する。「○○くんはここまでね」と切る配分を決めたり、「○○ちゃんが切る量が少なくなるから、もう変わってあげる」と友達を気遣う姿も見られた。自分たちで作ったピザは格別なようで「おいしい」「もっと食べたい」と喜び、おいしそうに食べていた。

≪Ⅲ期≫

〇12月

*ミュージックフェアに向けて(歌詞・絵画製作) 《話し合い》 子どもたちの大好きな貝塚市民の歌を合奏、合唱する事に決まる。歌詞の意味を理解し、また毛筆の成果を見て頂けるように歌詞を筆で書き貝塚市にちなんだ絵も描こうと保育教諭が提案しグループごとに取り組んだ。
貝塚市には何があるかクラス全体で子どもたちの発想を引き出しながら話し合いを行い、その後グループで相談して何の絵を描くかを決めた。散歩で行った場所や休日に出掛けた場所などからそれぞれに案を出し合い、各グループで“水間寺・二色の浜・海浜公園・コスモス”に決定した。

*ピアニカ遊び ミュージックフェア前には、それぞれの楽器の楽譜を見ながらピアニカで練習する姿がよく見られた。ミュージックフェア後には、ピアニカで楽譜を見ながら弾くという事にも興味が出てきたようであった。友達と楽譜を交換したり、ピアノを習っている子から『ハッピーバースデー』などの曲を教えてもらい覚えようとする子もいた。
クリスマスが近くなると普段歌っている『ジングルベル』や『雪』の楽譜が欲しいと一部の子どもたちからリクエストがあり準備した。
日に日にピアニカを演奏する子どもの輪が広がり「私ここまで弾けるようになった」と数人で披露し合う姿も見られた。友達と一緒に演奏することで互いに刺激され、より向上心が芽生えている様だった。

*廃材遊び(自由にテーマを決める) テーマは自由に自分で決め、1つの物を丁寧に作る事に取り組んだ。車や宝箱・ピタゴラスイッチ・人などそれぞれに興味のあるものをテーマにしていた。宝箱や車などは周りに画用紙や切り抜いた飾りなどを貼ったり「これは鍵」「窓付けよう」と細かなところまでこだわって製作を行っていた。また、これまでの経験を活かし、車はタイヤを付けた棒を筒に通して実際に車が動くようにするなど工夫し、1つのものを集中して作り込んでいた。完成すると「みんなに見せたい」という子どもたちの声があり、順番に作ったものを発表し見せ合う。
「動くのがすごい」「ピタゴラスイッチやって見せて欲しい」と友達が作ったものにも興味を示し、互いに認め合っていた。

*しめ縄作り 乾燥させたトウモロコシの葉(以前収穫したもの)を使用してしめ縄を作る。乾燥しているため葉を三つ編みにするのは難しそうであったが、ジャンケンや話し合って分担を決め、協力しながら製作する姿が見られた。
前回の人形製作をした時、保育教諭が霧吹きで葉を湿らせていたのを思い出し、「先生ちょっと水掛けて」と子どもたちから提案する姿もあった。
折り紙で紅白の飾りを作る際に保育教諭が説明をすると理解した子が中心となり、教え合いながら協力して完成させていた。
完成したしめ縄は玄関や廊下・合同の保育室に飾り、他クラスの友達や保護者の方に「これ、はと組が作ったんやで」と知らせ、誇らしげであった。

〇1月

*当番活動 今月より給食時の配膳・食後の掃除の当番活動を始める。
グループごとに1週間交代で行う。初めての当番活動に「先生どうしたらいいの?」「これってこう?」など保育教諭に聞きながらも楽しみながら取り組んでいた。
ごはん・味噌汁・お茶を入れる人・配る人に分かれるように伝えるが「私はこれがいい」と、それぞれが主張し合うため、話し合いで決めるよう促すと自分たちで「じゃあ、ジャンケンで決めよう」と意見を出し合っていた。中には、「今日○○くん誕生日だから星の人参入れてあげるね」と相手の事を思う姿も見られ、子どもたちの優しさが感じられた。

*おままごと(ガム屋さん) 以前より、ままごと遊びでブロックの色を活かしてガムに見立てて遊ぶ姿があった。
ブロックとして遊びたい子も多いので、他の物でガム屋さんが出来ないか子どもたちと話をする。
すると「自分たちで作ったらいい」という案が子どもたちから出た。布や綿を用意すると、初めは「どう作ろう?」と悩む姿もあったが、一人が綿を布にくるみゴムでくくって作り出すと、周りの子も刺激を受け作り出した。「こっちの模様の布で作ろう」「真ん中にゴムしたらリボンみたいになったよ」などと思い思いに作り、素敵なガムが完成する。子どもたちの手作りガムがおままごとに加わることで温かみのある保育環境になったように思う。

*不思議探し(第一回目:質問) 普段から子どもたちから(これはどういうこと?)(何に使うの?)と疑問や質問の声が上がっていた。子どもたちと不思議に思ったことを集めてみようという話が上がり、夏より質問ボックスを保育室に設置した。
今回は質問ボックスを開封し、子どもたちの質問・疑問について話し合いを行った。『女の子はいつもどうして髪型が違うの?』『鞄はどうしてロッカーに直すの?』『テラスにある四角の物(倉庫)は何?』など様々な質問があった。
少し前に書いたものも「これ私の質問」とよく覚えていた。女の子の髪型については女の子に理由を尋ねてみると「気分で変えてる」と返答があり質問した子も納得していた。
ロッカーに何故直すのかについて、まずは子どもたちに問いかけてみると「友達と間違わないように」「床に置いていたら踏んでしまうから」など想像を膨らませて理由を答えていた。
その他の質問も、それぞれが納得の出来る説明をし合い解決する。
テラスの物が何かなど自分たちだけでは解決出来ない質問はどうすれば良いか?と子どもたちに問いかけると、「園長先生に聞いてみよう」という意見が出た。
後日、園長先生に子どもたちから質問し、テラスの物は倉庫である事などを教えて貰い、今までの疑問や不思議が解決した事ですっきりとしたようであった。

*染め物(絵の具・卒園アルバム用)
《1回目》
それぞれに好きな色で染め物をする。ゴムを2重になるようにしばり「これでお花の模様になるんだよ」と仕上がりを想像しながら取り組む子もいた。
絵の具の液に付けて染めるが、水色やピンク・黄緑など薄い色を選んだ子が多かったため、あまり色が付かず模様も出なかった。
完成した布に「色あんまり付いていない」「模様がない」と残念そうであった。

《2回目》 前回の伸縮性のある布ではなく、更に分厚い生地の布に変えてもう一度染め物に挑戦する。
色を選ぶ際、前回水色を選んだ子は「この前の青は水色に染まったから今回は青色で染めよう」と前回の経験を活かして色を選んでいた。「今回は大丈夫かな?」「模様付いて欲しいな」と期待を抱きながら染める。今回濃い色を選ぶ子が多かった事や布を変えた事で良く染まり、模様もしっかりと付いていた。1回目の経験を子どもたち自身で活かし、2回目に繋げる事が出来た。

〇2月

*当番活動 当番活動を始めて1ヶ月が経ち、各グループ2回目の順番が回ってくる。
他のグループの当番活動の様子を見たり、1度行った経験から「今日はお汁入れるので手袋を下さい」などとスムーズに自ら準備を行っていた。
また、当番活動が始まる前に「○○グループさん集まって。どれするか決めよう」と子どもたちで相談し、「この前やったから今日は○○ちゃんいいよ」と譲り合う姿もあり、話し合いにも優しさが見られることがあった。

*泥団子作り(第4回目:自由に) 「ピカピカの泥団子を作ろう」という子どもたちの声からピカピカ団子を目標に作り始める。今までの経験を活かし、地面表面のざら砂をどけて下の湿った土で作る子・友達と協力しながらさら砂を作り、その砂でだんごを作る子と様々であった。
また以前団子入れに入らない大きさだった事から、団子入れに入る大きさのものを考えて作っていた。
以前までは、形が出来ると「完成」とおしまいにしていた子も、そこから更に砂をかけて磨き、集中して作り込んでいた。
「ここら辺(コンクリートと砂の境目)にさら砂がいっぱいあるんだよ」と作る工程によって場所を変えたり、作り方にも個性が見られた。
また、初めは手で擦り、ある程度綺麗になってから「そろそろ布で擦ってもいいかな」と保育教諭や団子作りが上手な子にアドバイスを求め、ただ布で擦るのではなく良い頃合いをしっかりと見て擦り、丁寧に仕上げていた。
年間を通して行った泥団子作りから、作りやすい土・さら砂が集まりやすい場所、布で擦る頃合いなどを感覚的に学び吸収している事が感じられた。

*グループ 近隣の小学校からご協力頂き、机を1カ月お借りして就学に向けて準備を進める事が出来た。給食時にはグループで机を合わせて食べている。
だんだんとこの机にも慣れてきたようで、グループ内で話をし、形を変えることなく自分たちで誰がどこに座るかを相談して決める姿が見られるようになる。
その後、他のグループも「私たちも座る位置を変えてみよう」と声を掛け合い相談して変えるグループもあった。だんだんと座る場所を変えるだけでなく「顔が見えるように丸くなろう」と五角形に机を配置してみたり、グループごとに個性が見られるようになった。自然と話し合いで決める事が出来る様になってきた。

*不思議探し(第2回目:園内不思議探し) 今回はグループごとに園内を回り不思議探しをして、気になったところを子どもたち自身が写真撮影をした。
初めは何を撮ったら良いのかわからずに戸迷う姿もあったが、探すうちに「これは何のためにあるの?」「これは何?」と意欲的に不思議を探す姿が見られた。園内を見終えた後は、部屋で一人ひとつずつ不思議に思った事を発表した。
「はと組のカレンダーだけどうして違うのか」「事務所にあるオレンジの(AED)は何か?」「テラスにシャワーがあるのは何故か?」など様々な不思議があった。不思議の答えを子どもたちに問いかけると「はと組は思い出に残るように他のクラスと違う」「(AEDは)怪我した人を助けるもの。電気でビリビリする」「プールの時にシャワーするから(テラスにある)」など、どれも納得の出来る返答であった。
考えてもわからないものは園長先生に教えてもらい、今回知った事を次回プロジェクターに写真を写して子どもたちの言葉で発表する機会を作る予定である。

〇3月

*不思議探し(第3回目:発表) 前回の不思議探し後に個々に発表する不思議を選び、その写真について園長先生に「何故か?どういうものか?」を個別に質問して理解を深めた。園長先生に質問する時には、何を不思議に感じたか言葉での説明が難しい子もいたが、教えてもらうと友達や保育教諭に「これって何か知っている?」「これは〇〇なんだよ」と教え合い、共有し合っていた。発表時には子どもたちの撮った写真をプロジェクターで映し出す。子どもたち自身で写真を撮ったことで、よりどのように見えているのか何が不思議なのか?が分かりやすくとらえられていたように思う。舞台に上がると緊張した様子もあり、どのように話すか悩む子もいたが、「○○が不思議に思いました。」「これは〇〇でした。」と教えてもらった言葉を思い出しながら子どもたち自身の言葉で説明していた。
不思議探しや今回の発表を通して、興味や関心・伝える力が育まれたらと思う。

〇折り紙製作

昨年度に引き続き、月ごとに合ったものや子どもたちの興味のあるものを題材に月ごとに折り紙製作を行った。昨年は簡単な内容のものを折っていたが、今年は少し難しい内容の折り方にも挑戦した。難しい工程は「どう折ったらいいの?」と苦戦する子もいたが、自分が理解出来ると、困っている友達を気に掛けたり「ここはこうだよ」と子どもたち同士で教え合いながら協力して取り組む姿が見られた。

(5月 手裏剣 /7月 折り紙相撲 /9月 こま /1月 吹きゴマ  /2月 ピョンピョンうさぎ)

〇まとめ

はと組の子どもたちは好奇心旺盛で発想力が豊かで柔軟な子どもが多く、話し合いの時間や考える時間を大切にしながら子どもたちの言葉や発想・感性を軸に活動を考えてきた。主体性を培う中で、徐々に自分を制御する力《自律》が芽生え、そして他児の痛みを知ったり他児の喜ぶ事をしようと手助けする《他者支援力》が生まれると言われている。
この1年間「栽培・泥団子作り・染め物・不思議探し」更にそれ以外にも様々な場面で話し合いを行ってきた。初めは個々の主張ばかりが目立ち、最終的にそれをどのように決めるかが難しそうであったが、互いの思いや考えを共有し、共通の目的の実現に向けて話し合いを重ねる事で、相手を思いやる心が育まれると共に、共同性の育ちに繋がっていったように思う。また、栽培・泥団子作り・染め物・不思議探しなど年間を通して行い回数を重ねる事で、初めは興味・関心が薄かった子どもも(こうしたら良くなるんじゃない?)(次はこうしてみたい)と次第に興味を深めていた。
1回目経験した事を振り返る事で気付きが芽生え、2回目以降はより良くしようと前回までの経験を活かして考え・工夫する事で、子どもたちの思考力を引き出せるものとなったように感じる。子どもたちの発見・気付きを取り入れ、発展させる事で子どもの学びを刺激する事に繋がった。
この1年だけでなく、これまでに培った資質・能力に基づき、それぞれが主体的に自己を発揮して、これからの学びに向き合う力へと繋がってくれると嬉しく思う。