令和4年度 研究記録・・・
令和4年度 かもめ組・4歳児 研究発表
テーマ『素材探求遊び』
〇はじめに
小さい頃から指先を使った遊びを楽しんできたという姿を大切にしたいと共に、発想力や創造力が豊かな子どもたちの姿をさらに伸ばしていきたいと思い、『素材探求遊び』を一年間のテーマとする事にした。様々な素材に深く触れる中で、子どもたちそれぞれが探究心を持ち、不思議に思った事や気になった事を試す事で、新たな気付きや発見・学びを引き出していきたいと考えた。保育教諭が提供するのではなく“何の素材で遊びたいか”“どんな道具を使いたいか”なども、子どもたち自身が考えて遊べるようにし、ドキュメンテーションやサークルタイムを用いて子どもたちが遊びを振り返ったり、次回に向けて試行錯誤出来るような環境を整える工夫を行った。前期(4~10月)はそれぞれの素材(紙・ビニール・プラスチック・絵の具・粉・砂)で遊び込める時間を設け、素材によっての違いを感じたり、素材の楽しい部分・面白い部分を知れるように進めていった。後期(11~3月)は、グループやクラスでの話し合いを中心に遊びを進めていく機会を多く設け、友達と協力する事の大切さや友達と意見を出し合って遊びを広げていく楽しさを感じられるように進めた。
○4月・5月 『紙素材』
前半では紙素材に触れる為、段ボールや紙コップなど様々な紙素材にクレヨンを用いて絵を描いて遊んだ。ダンボールは厚みがあるので少し力を入れないと描けない・立体の段ボールに絵を描くとガタガタと音がなる・カレンダーの裏紙はつるつるしていて描きやすいなど紙素材の中でも違いがある事に気付く。また、こいのぼり製作にもダンボールとプラスチックダンボールを取り入れ、スタンプ作りを行った。プラスチックダンボールは「かたくてまるまらない」「ダンボールはすぐにできたよ」と形を変化させる事にも違いがある事に気付く姿が見られた。紙素材に触れる機会を設けた後、“紙素材には何があるのか”をサークルタイムでこどもたちと考える時間を作る。サークルタイムが始まると、新聞紙や折り紙など普段使っている紙素材の物を思い出す姿が見られ、次第に「カレンダーもかみじゃない?」「えほんもかみだ」と身近にある物や遊んでいる物の中から紙素材を見つけて伝え合っていた。
後半には、サークルタイムで出た様々な紙素材の材料を用いて自由に遊べるようにする。材料(トイレットペーパーの芯・紙コップ・紙皿・おはな紙・折り紙・画用紙・ダンボール・封筒など)を準備し、環境を整えた。初めはどのようにして遊ぼうか戸惑うこどもたちであったが、前半で行った事を思い出してクレヨンで絵を描いて遊んだり、ダンボールを組み立てて遊び始める姿が見られた。遊びを進めていくにつれ、「ハサミつかいたい」「えのぐもつかってみたい」と子どもたちからリクエストがあり、切ったり塗ったりして遊びが展開されていった。
遊びを終えた後にもサークルタイムを取り入れ、遊びを振り返ったり、次はどのような遊びをしたいかなどイメージを膨らませる時間を作る。「かみをみずにつけたらどうなるんだろう」「おおきないえをつくりたい」と、次回に向けてのイメージが膨らむ様子が見られたので、それを踏まえて再度遊べるようにする。折り紙やおはな紙を水に浸けてみた事で、 “折り紙は色が変わる”“おはな紙は水に色が出る”などの新たな発見もしていた。様々な疑問を実際に試し、発見や気付きに繋げる姿が遊びの中で少しずつ見られるようになっていた。
〇6月・7月 『ビニール・プラスチック』
前半では、ビニール・プラスチック素材とはどのような物なのかを知り、親しみが持てる様にスクリーンとパソコンを使い、調べてみる。その中にあった巨大風船で遊んでいる様子を見て「したい」という意見があったので、活動で行う事とする。大きなビニールを繋ぎ合わせて更に大きくなった袋に風を送り、膨らませる。最初はなかなか膨らまず「なんでだろう」と考える子どもたちであったが、穴が開いている事に気付く。子どもたちの「テープではったらどうかな」という意見を取り入れ、貼り直してみると大きく膨らみ始めた。この遊びの経験から穴が開いていると空気が抜け、膨らまないという事を知った。また、雨の日にはレインコートを着用して散歩にも出掛けた。着用時には「これもビニールみたい」「あめにぬれない」とレインコートもビニール素材だという事に気付く姿が見られた。 素材に触れる機会を設けた後、サークルタイムを行い、ビニール・プラスチック素材はどのような物があるか子どもたちと再度一緒に考えた。4月から遊んでいた紙素材では“新聞紙”“画用紙”など身近にある物が多く、すぐに見つける事が出来たこどもたちであったが、ビニール・プラスチック素材は子どもたちにとって“ビニール袋”以外のイメージが付きにくく、皆で探す所から始めた。遊びや散歩で使用した“ビニール袋”“レインコート”の他に、普段何気なく使っているペットボトル・ストローなどがビニール・プラスチック素材という事を知り、新たな知識になったようであった。 サークルタイム後、プラスチック・ビニール素材(ビニール袋・ストロー・プチプチ・コップ・ペットボトル・風船・圧縮袋・チャック付きポリ袋・ビニールテープ・スズランテープ)の材料と紙素材同様、様々な道具(ハサミ・クレヨン・テープ・絵の具・水など)を使用して自由に遊べるようにする。製作を楽しむ中で、ハサミを使ってペットボトルを切ろうとすると「かたくてきれない」と紙素材とは違う事に気付き、使えない道具もあるんだと学んだ様であった。その反面、クレパスで絵が描く事が出来たりと紙素材同様に出来る事があるというのも知った。また、レインコートで散歩へ出掛けた経験から、プラスチック・ビニール素材は、水をはじくという事を思い出し、ビニール素材を水に浸けて遊ぶ姿が見られた。そのような姿から後日水遊びで使用する船を作ったり、圧縮袋やジップロックを使ってウォーターベットを作り、夏らしい遊びにもビニール・プラスチック素材を取り入れた。 後半になると、「パソコンでしらべたい」という子どもたちからのリクエストがあり、パソコンを準備する。「これつくりたい」「どうやってできるんだろう」と不思議に思った物をパソコンで調べ、調べた画面を見ながら作る姿が見られた。この頃から“調べる”という事を取り入れ、新たな事を知りながら遊びを進めていく姿が見られるようになった。
〇8月・9月 『絵の具』
夏の遊びとして、ボディーペインティングや色水遊びを取り入れていた事もあり、絵の具の楽しさを感じていた子どもたちであったが、今までの経験から“絵の具=紙に描く”という繋がりがあったようで、サークルタイムで“どのような遊び方をしたいか”を考えるが、「かみにかきたい」との声しか上がらなかった。そこで、様々な物に描ける事を知る機会になればと紙ではなくビニールに自由に描く機会を設けた。普段使っている水彩絵の具ではなく、アクリル絵の具を取り入れてみる事で、絵の具の中にも種類がある事を知った。絵の具に触れる中で、アクリル絵の具は乾くとぺリペリと剥がせる事を発見したこどもたちは、水彩絵の具との違いに面白さを感じていた。また、素材の載っている本や絵本などから絵の具を使った遊びのヒントも得た。その中にあった指スタンプでは、絵の具の他に朱肉を準備し、行ってみた。自由に遊ぶ中で、指スタンプで花を描いたりと自分のイメージを表現出来る姿や器用さが見られるようになってきた。また、絵の具と朱肉の色は色の出方が違い、その様子に気付く姿も見られた。
子どもたちからのリクエストがあったので、色水遊びも行う。子どもたち自身が色を混ぜて色水を作れるように単色の絵の具・水のみを準備した状態で遊びを始めた。自分で一から色水を作れる事に喜び、様々な色を混ぜてどんな色になるのかを試していく姿が見られた。ピンク色でも配合によって少しずつ色が違う事に気付き、「これはアカとシロをまぜたよ」「アカいっぱいとアオちょっとでシロもまぜたよ」など色の作り方を伝え合いながら楽しんでいた。色の違いに気付く姿が見られたので、絵の具以外の物で色水を楽しむ事は出来ないか…と考え、園庭に咲いている朝顔と以前素材遊びで色水が作れる事を発見したおはな紙を使用してみる事とする。朝顔・おはな紙を使った色水遊びでは、植物に興味があるこどもを筆頭に“どうすればお花から色が出るんだろう?”と考え、ペットボトルやコップなどを使って試し始める。様々な方法を試す中で、ペットボトルに水と朝顔を入れ、振ると色が出てくる事に気付く。1人が気付くと、どんどんと広がり「おはなからもいろがでた」と次々に朝顔の色水を作る子どもたちであった。また、おはな紙でも紙素材で遊んだ時の事を思い出し、水に浸けて色を出していた。絵の具・朝顔・おはな紙と3種類の色水を作ってみると、色の濃さが違い、“絵の具の色水って色濃いね”と気付きを友達と共有していた。色水遊びで作った色水は凍らし、後日氷遊びで取り入れた。
子どもたちからサークルタイムで出た“紙に描きたい”という意見も実現する。紙は様々な大きさや形の物(画用紙・カレンダー・キッチンペーパー・段ボール)を用いて、テラスで自由に描けるようにする。筆だけでなく、様々な道具(ローラー・綿棒・歯ブラシ・タンポ・フォーク・ストロー)も一緒に準備すると“こうしたい!”“○○描きたい”という思いが膨らんだようで、思い思いに絵の具に触れながら楽しんでいた。道具によって様々な色の出方があり、スパッタリングや吹き絵などの技法も遊びの中で知り、絵の具と一緒に道具を使用する楽しさも感じた様であった。
絵の具を使った様々な遊びを経験した後、後半にもう一度サークルタイムを行う。前半と同じように絵の具を使って“どのような遊び方をしたいか”を子どもたちと考える。経験した遊びをもう一度したいと言う発言もある中、紙やビニールなど描いた事のある素材以外の物に描いてみたいという意見があり、“竹”“木”“服”などの素材が出た。そこで、子どもたちから意見が出た素材を準備し、絵の具遊びを行う事にした。今まで描いた経験のない素材ばかりで、心を躍らせる様子が伺え、さっそく気になる物にお絵描きを楽しんでいた。それぞれのこどもたちがお気に入りの素材を見付けて「かがみにみみ(うさぎの)かいてかおをちかづけてみよう」「みどりのたけがアオいろになってきた」とその素材ならではの楽しみ方をしていた。絵の具遊びで可愛く仕上がった物は、子どもたちが飾る場所や使う場所を決めた。
絵の具遊びは、家庭ではなかなか経験する事のないダイナミックな遊び方を経験し、子どもたちも“楽しい”という気持ちを大きく表現してくれたように感じる。また“○○したい”とリクエストする姿もどんどんと増え、子どもたちが主体的に『不思議に思う→試す→発見や新たな経験をする』という遊びの展開を楽しむようになってきた。
〇10月・11月 『粉・砂遊び』
まずサークルタイムでスーパーやお料理の場面を皆で思い出し、粉にはどんな物があるのかを考えてみた。料理で馴染みのある塩・砂糖・小麦粉や、感触遊びで遊んだ事のある寒天や片栗粉などが子どもたちから上がる。次に、子どもたちから出た粉がどんな物かを知れるようにいくつもの粉を用意し、比べながら感触遊びを楽しんだ。感触遊び後、どんな匂いだったのか、手触り(そのままの状態・水に濡れた状態)はどうだったのかを子どもたちに聞き、活動を振り返った。特に砂糖は水を足すと、ベタベタになるという事を感触遊びを通して実感したようで、「りょうりにもさとうはいってるもんなぁ・・・」「だからはみがきしないと、はがベタベタでむしばになるんや!」と食育にも繋がった様子が伺えた。
他にも、泡遊びの中で重曹やクエン酸を使ってのバスボム作りやせっけん作りなども行った。馴染みのない粉でも、身近にある物を手作り出来る材料になると知り、新たな楽しい遊びを経験出来る機会になったように感じる。様々な粉に触れる機会を作った後、特にこどもたちに馴染みがあり、興味を向けていた塩と砂に絞り、活動を進めていった。
二色の浜に散歩に行った際の、こどもたちからの「うみのみずってしおからいから、しおはいっているんかな…」という発言から、海水を採取して持ち帰り、塩を取り出してみる事にする。バットに薄く海水を張り、日光に当てて数日置き、様子を見てみた。すると海水が蒸発し、塩が浮かび上がった。これには子どもたちも「しおができた!」と大興奮であった。しかし、手作りの塩は、市販の塩と違い、真っ白ではなくゴミも混じっていた。その点から“売ってる物は綺麗にして食べられるようにしている”と気付き、学ぶ子もいた。後日、作った塩を使って砂アートをしてみた。ボンドで絵を描き、その上に塩をかけて絵を浮かび上がらせるという技法で楽しんだ。また、二色の浜の砂も持ち帰っていた事を思い出したこどもたちから、「すなでもしてみたい」という声が上がったので、同じ方法で砂アートも行う。塩の白色・砂の茶色と色の使い分けをしながらアートを楽しみ、表現していた。
その他にも、砂に触れる機会も多く作った。雨上がりの水たまりを利用して泥団子作りを楽しんだ事をきっかけに泥団子作りに夢中になる子が多く、もっと深く楽しむ事は出来ないかと泥団子作りに取り組む機会を多く設けた。まずは、きれいな泥団子を作るには何が必要だろう…と考え、きれいなサラ砂を作ってみる事にする。サラ砂はふるいにかける回数を増やすごとに、どんどんサラサラになる事を発見し、サラサラ度の違いを観察してみたり、自分たちで作ったサラ砂の気持ち良さを感じていた。気持ちの良い感触を感じると、サラ砂作りにも意欲が沸き、集中して沢山のサラ砂を作るこどもたちであった。後日、そのサラ砂だけを使った泥団子作りも行い、どんな泥団子が出来るか試してみた。サラ砂のきめ細やかさが綺麗な形が出来るかどうかに影響する事を発見し、何度も繰り返しサラ砂をかけ、丹精を込めて泥団子作りに励んでいた。
遊びの中で、「すなにもいろをつけれるかな…」という子どもたちの発言があった為、色砂を作る事にする。作ったサラ砂に絵の具を混ぜていくと、砂が泥のような硬さになり、「いろすなでどろだんごもつくれそう」とワクワクした様子が伺えた。そんな子どもたちの面白い発想を大切に、色砂団子を実践してみる事にする。色を混ぜた砂(赤・青・紫・虹色)を用意し、それぞれの色の砂を泥とサラ砂に分けた。好きな色をこどもたちそれぞれが選び、色ごとで泥団子作りを行っていった。砂とは違い、綺麗に色の付いた色砂を使う事で子どもたちの楽しいという気持ちも倍になったようであった。
丸い綺麗な形のお団子を作れるようになってきた子どもたちであったが、“お団子作りは綺麗な形を作れて完成”と思っている子どもたちも多かった。綺麗な形を作ったその後の展開がある事を知れたらいいなと思い、パソコンで作り方を調べてみる事にした。調べてみると“磨く”という方法がある事を知り、「ストッキングでみがいてみたい」とこどもたちからリクエストが上がる。子どもたちの声を受け止め、ストッキングを用意する事とした。また、せっかく綺麗な泥団子を作るなら…と泥団子の披露会(発表会)もする事にした。
〇12月・1月
*お団子披露会(発表会)
・予め、披露会の日を決め、子どもたちに伝えると共に、分かりやすい所に字でも示しておく。
・発表会に向けて
発表する用の泥団子を1人1つ作る事を約束として決める。(泥団子の形・大きさは自由とする)期限は、お団子披露会の日まで。
・披露会(発表会)
発表の仕方はこどもたちと決め、マイクで名前を言い、皆の近くを泥団子を見せながらランウェイのように歩くという方法に決定する。リクエストがあった際は音楽も使用する。
当日は、嬉しそうに皆に披露する姿が見られ「ちいさくてかわいい」「おおきくてすごいな」と友達同士で友達が作った泥団子の個性を認め合う姿が見られた。また、発表会の前に壊れてしまった子どもたちもいたが、工夫した点・作り方などの発表は行った。そんな友達にも「がんばってつくってたもんなぁ…」「きれいなおだんご、みてたよ」と声を掛けてあげるこどもたちであった。様々な友達の泥団子を見て、良い所もたくさん見つけたこどもたちであったが、最後は“やっぱり自分のが一番上手だった”と自画自賛するほど、自信を持って仕上げる事が出来たようであった。発表終了後、「つぎはいろすなだんごでしたい」と次への意欲も見せる子どもたちであった。
第二回目は、子どもたちのリクエストを受けて色砂を使った泥団子で披露会を行う。ピンク・水色・緑・黄の中から一色選び、お団子を作っていく。二回目という事もあってか自由な発想や作り方が見られ、形を工夫し、メロンパンやUFOなど様々な形を楽しむ姿も見られた。発表会の日を皆で決め、それまでに一人一つのお団子を作るという方法を取った事で、自分たちで考えて時間を見つけてはお団子作りを進める姿があり、計画を立てて、見通しを持って行動出来る姿が見られた。
*リース作り
“他児と一緒に意見を出し合って一つの事を決める”という今まで行ってきたグループ活動に加え、初めて“他児と一緒に何かをする”という共同作業を取り入れた。
まずは園内探検をし、園にある様々な素材のリースを見る事でリース作りのヒントを得られるようにした。
後日、リースの作り方はグループで話し合い、使う材料から飾り付けの仕方までをこどもたちが全て決められるよう進めた。使いたいと出た素材はグループごとにバラバラで、ペットボトルやダンボール・トイレットペーパーの芯・布・木のツルなどが上がった。子どもたち同士でのやりとりを出来るだけ大切に、保育教諭は口を挟まず、問い掛けるようにして聞き取りをしていく。好きな材料を使えるよう子どもたちから案が出た材料は全て用意するが、何を使うかはグループの全員が納得した上で使用するように約束を決める。
グループでの話し合いの際は、消極的な様子だったこどもも、製作の場面になると「〇〇くんここてつだって」「みんな、ここにこれはっていい?」と相談したり、協力する姿が見られた。気持ちが切れてしまった子に「〇〇くん、これやったらやってくれるかな?」と声を掛けてあげたりと、思いやりや自己表現を出来る姿が見られ、違った種類のグループ活動を通して、こどもたちそれぞれの姿・良い所を見つけられる機会となった。また、グループで話し合ってイメージしていた物を形に出来た事で、達成感を感じていたと共に、協力する事の大切さや心地良さを感じていたようである。
〇2月・3月
*積み木作り・対決 まず、積み木遊びの楽しさを知れるよう好きなお友達と自由に楽しむ時 間を設け、高く積み上げる・並べて形を作るなど様々な遊び方を知る。積み木作りを楽しむ中で、自分だけの積み木を作ってみるのはどうだろうかと提案してみると「つくりたい!」と目を輝かせ、意欲的なこどもたちであった。グループ活動での積み木遊びを行う前に積み木作りを行い、より気分を高められるように進めた。軍手をし、自分たちで木をやすって積み木作りを行う。やする事で形が変化したり、木くずが出てくる事を知り、普段から使っていた積み木もこのようにして出来上がったんだなと感じていた様子であった。出来上がった積み木には、絵を描いたり色を塗ったりして、たった一つの自分だけの特別な積み木に仕上げた。それを使って後日グループ対抗のドミノ対決を行う。積み木を立てて並べる子もいれば、横に倒して並べる子もおり、ドミノも様々な形で楽しんでいた。中には、友達の失敗を受け止められない子もいるが、グループでの協力も上手に出来るようになってきた様子が伺え、声を掛けたり話したりしながら進めていくこどもたちであった。
*家・秘密基地作り
家作り・秘密基地作りは他児と話し合い、ダンボール・木・竹など様々な素材や物で作れるようにした。また、場所も自由に決め、数日置いておく事にした。自分たちで作った小さなスペースがある事で、コーナーが普段と違ったより楽しい空間・落ち着く空間になればと考えた。イメージが付くよう事前に広告遊びで家・秘密基地作りを行ってみた。長い棒状の物を作ってそれを骨組みにしたり、紐で広告を縛って藁の家を作ったりと広告だけでも様々な形の家が出来上がっていた。
広告での家作りでイメージが持てた子どもたちは、様々な素材を使っての家づくりにも意欲的で“こうしたい”“〇〇使いたい”と、どんどんアイディアが出てきた。テラス・部屋の2つに分かれて作り始める事にしたが、グループより多い人数での初めて共同作業を経験する中で、意見を出し合ったり、意見を受け止め合ったりする事に苦戦する姿が見られた。家の形が出来始めると、こどもたちのイメージも具体的になり、「ここはこうしよう」「〇〇をつかおう」と意見を出して、活動を引っ張る他児に協力したり、アイディアが膨らむ姿が見られるようになった。
完成した家の中は、こどもたちにとって楽しい・落ち着く環境になっており作って終わるだけでなく、目を輝かせながら友達と遊び、楽しい時間を過ごしていた。
*お雛様製作
様々な素材で遊べるようになってきた子どもたちの姿を見て、お雛様製作も自分たちで作り方を考えて作ってみてはどうかと提案してみた。自由に作れるという事に意欲的で、早速“どんな素材を使おうか”“どんな飾り方にしようか”とイメージを膨らます姿が見られた。作り方がイメージしやすいように使えそうな素材を提示したり、どんな飾り方があるのかを話してから製作に入る。使った素材は様々で、飾り方は置く・吊るす・掛けられる物の中から選んで作れるように進めた。
製作コーナーで素材を使って自由に作る経験をしていた事もあり、ほとんどの子どもが悩む事なく、素材・飾り方を選択し、作り進める姿が見られた。また、「ここはこうしたい」とこだわる子も多く、豊かに自分のイメージを表現出来るようになってきていた。
・製作コーナー
夏頃、午睡が終了した事もあり、お昼からの遊びも充実したものになればと製作コーナーを設置する事にする。素材の種類別にかごを分け、写真を付けて整理整頓しやすい環境を整える。素材についても、出来るだけ子どもたちのリクエストに答えられるように用意する。テープやボンド・ペン・絵の具なども自由に使えるよう製作ワゴンに用意し、製作スモック・製作用ズボンも自分たちで考えて自由に着脱出来るよう収納した。
また、製作に夢中になる子どもたちの姿から作った物を飾れるスペースを作り、ネームプレートを使って何を作ったのかが目で見てすぐに分かるように工夫した。遊び方・約束事もクラスで相談し、話し合って決め、皆が守って遊べるような空間になるよう環境を整えた。
“自分たちで考えて作る”という機会が増え、元々イメージを膨らますのが上手な子どもたちであったが、製作コーナーを通してより豊かな感性になったように感じた。「おやすみのひに、ラーメンたべにいったからつくろう」「きのうテレビみたからテレビつくりたい」と自分たちの経験や体験から作りたい物をイメージして作り出す姿が多く見られ、中には「テレビでこんなおもちゃの作り方してて、おぼえてきたねん」と過去に何かで見た作り方を思い出しながら形にする子もいた。製作コーナーを設置してすぐは道具の使い方もまだ分からず、何でもテープで貼っていたり、ハサミで切り刻んで何も作らずそのまま…という事もあったが、少しずつ道具の使い方も上達し、何を作ろうか考えて作れるような姿に変化していった。
・ドキュメンテーション 前期の“素材遊び”(紙・プラスチック・絵の具・粉)は、ドキュメンテーションを作成し、どんな素材があったのか、どのように遊んだのか遊びを振り返れるようにした。ドキュメンテーションは、サークルタイムでのこどもたちの言葉を書き込むようにして作成し、そのドキュメンテーションをこどもたちが見れる所に掲示し、後期の活動に繋げていけるようにした。 ドキュメンテーションを作成した事で、子どもたちが目で見てすぐ活動を振り返られる資料になり、「こんなんしたなぁ」と楽しかった思い出を話すきっかけにもなっていた。また、素材コーナーの中でも自分たちで見返し、振り返りながら同じ遊びを試す姿も見られた。
〇まとめ
前期の素材遊びでは、子どもたちが自由に遊べる環境の中で、様々な素材に触れ、様々な遊び方を行った。子どもたちが素直に疑問に思った事を小さな事でも自由に試せる環境を整えた事で、子どもたちにとっては大きな発見や学びに繋がった様子が伺えた。例えば、紙コップに色を塗ってみたいとこどもたちからのリクエストがあった際、絵の具を用意して色を塗ってみると、紙コップの中は絵の具を弾いて色が付かなかった。その事から、“水を弾くようになっているから飲み物を入れてもこぼれない”という事を学んだ子どもたちであった。このように遊びの中での子どもたちの学びや発見を大切にし、活動を進めていった事により、子どもたちが主体的に様々な経験・体験を楽しむ事が出来た研究テーマになったように感じる。また、素材の特性や使い方を遊びの中で理解する事で、より遊びも広がっていった。後期の活動に関しては、子どもたちのアイディアや姿を大事にしたいと思い、出来る限り援助せずに子どもたちに委ねながら活動を進めていったが、前期での活動の発見や学びが発揮され、子どもたちから楽しい・面白いアイディアや発想が沢山飛び出した。子どもたち自身も学びや発見をする事の楽しさを感じていき、段々とやりたい事・使いたい物をリクエストする姿が増えていった。出来るだけそれに答えられるように環境作りを工夫した。どんな素材遊びにも意欲的に取り組む中で、発想力も創造力も豊かに育ってきたように感じる。ドキュメンテーションを使用したり、素材遊びからサークルタイムやグループ活動に繋げたりと子どもたち自身も素材に触れるだけでなく、友達関係においても様々な経験をする機会になったように感じる。素材探求遊びを通しての経験が物造りだけでなく、今後の子どもたち同士での関わりや経験において力になってくれる事を願っている。